A small wooden carrying box created from Kiso hinoki used to carry offerings for a household Buddhist altar at the request of an acquaintance.
近所の方からの依頼で、お仏飯を運ぶ岡持が古くなったので新しく造って欲しいとのご依頼。先代の頃まではたびたび注文をもらっていたが、最近ではまれになったお仏壇用の岡持。今回は、好みのデザインのサンプルをベースに、サイズを一回り小さくしてほしいという内容。今でも必要としてくれる方がいることへのうれしさと、先代や先々代の仕事を振り返ることができる機会に、自然と前のめりになった。
木材は、長年自社で寝かせていた木曽桧を使用した。神社仏閣や伝統工芸品などに使われる材料で、緻密な年輪で美しく、しっかり水分を抜いているので、狂いが少なく耐久性も高い。見た目も良く、永く愛用してもらえるだろうと選んだ。
形づくりでは、持ち手の持ちやすさと安定感を意識して製作を進めた。持ち手は流れるような滑らかなフォルムにし、手なじみの良さと、美しさに拘った。さらに、岡持として必要な強度実現のため、角は枡組加工を採用し、底板の収縮があっても対応できるように0.5mm程度の遊びをもって加工した。そして、塗装は蜜蝋にして、木の美しさはそのままに、水アカや油汚れがつきにくいようにした。単に先代の見本をそのまま真似るのではなく、各部位のサイズを見直し、デザイン、木組み、塗装まで気を配った。
お客様の了解の下、一ヶ月ほどかけて製作。納品時にはとても喜んでいただくことができた。毎日のお供えが少し心地良く、そして永く続いていくことを期待している。
岡持